最高裁判所第三小法廷 昭和38(オ)261 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理 由
上告代理人山本敏雄の上告理由第一(一)について。
商法一四七条により合資会社に準用される同法七五条の規定は、社員が、自己ま
たは第三者のためを図つて、会社に損害を与えることを防止しようとする法意であ
ることは所論のとおりであるが、同条にいう「取引」とは社員と会社との間に直接
成立する利害相反行為を指すものであることは規定上明らかである。本件において、
上告会社代表者Dは、一方において、上告人Aの法定代理人として、被上告人に対
し原判示和解上の債務を負担し、他方、上告会社の代表者として、同会社が右債務
につき連帯保証の責に任ずべきことを約諾し、かつ、上告会社所有の本件第一物件
につき判示停止条件付代物弁済契約を締結したというのであるが、右連帯保証なら
びに代物弁済契約の締結は、前説示に徴し、商法七五条の取引には該当しないもの
といわなければならない。叙上と同趣旨に出た原審の判断は正当であり、所論は採
用できない(所論引用の判例はいずれも本件と事案を異にし、本件に適切でない)。
同(二)について。
会社は、定款によつて定まる目的の範囲内において権利を有し、義務を負うもの
であるが、その目的の範囲内というのは、定款に目的として掲記された個々の事項
の範囲内に限定すべきものでなく、この目的を達成するに必要な行為は、すべて、
この範囲内に属するものと解すべきであり、その目的達成に必要なりや否やは当該
行為が定款の記載自体から観察して客観的に抽象的に必要でありうべきかどうかの
基準に従つて解すべきであることは当裁判所の判例とするところである(第二小法
廷昭和二七年二月一五日判決、民集六巻七七頁、第二小法廷昭和三〇年一〇月二八
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日判決、民集九巻一七四八頁参照)。そして、原判示のとおりコーヒー生荳の輸入
焙煎精製、果実蜜製造、コーヒー加工品、洋酒、食料品の販売およびこれに付帯す
る一切の業務を目的とする上告会社が、上告人Aのために、同人の被上告人に対す
る借金債務について連帯保証ならびに停止条件付代物弁済契約をすることは、特段
の反証のみるべきもののない本件においては、上告会社の目的遂行に必要な事項と
解すべきであるから、右契約をもつて上告会社の目的の範囲内に属する行為と判示
した原判決は正当であり、所論は理由がない。
同(三)について。
所論は本件第一、二物件の停止条件付代物弁済契約が公序良俗、正義公平に反し、
右契約を実行することは権利の濫用であると主張するが、右は原審の認定しない事
実を想定し、または、原審の認定と相容れない事実を前提として原判決を攻撃する
ものであつて、採用できない。
同(四)について。
原判決によれば、上告人Aの親権者Dが同上告人の代理人として、同上告人のた
めに債務を負担し、これを担保するため同上告人所有の本件第二物件を担保に供し
た行為が、Dにおいて自己の利益を図るため親権者たる地位を濫用してしたもので
あることを認めるに足る証拠はないというのである。されば、所論は、原審の認定
しない事実を前提として原判決を攻撃するものであつて、採用できない。(なお本
件上告理由中原審に提出した準備書面の記載を引用する部分は不適法であつて、判
断を加えるべき限りでない。)
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 五 鬼 上 堅 磐
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裁判官 石 坂 修 一
裁判官 横 田 正 俊
裁判官 柏 原 語 六
裁判官 田 中 二 郎
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